日本武道館 中道場棟増築 

説明

平成25(2013)年9 月のIOC 総会で2020 年の東京大会が決定し、日本武道館ではオリンピックは柔道と空手、パラリンピックは柔道、計3 種目が開催されることになった。半世紀余りの間にオリンピックも柔道自体も大きく様変わりした。“Judo”は世界中に普及し競技人口も爆発的に増えた。階級数も4 階級から7 階級となり、女子種目と団体戦が創設され、障害者の柔道も活発になった。日本武道館は新しい時代のスポーツの祭典の場となることが求められたのである。
大会期間中は、観客、各国選手団の選手・役員、IOC・JOC・オリパラ組織委員会関係者、マスコミ関係者まで含めると膨大な人々が会場に集う。試合会場はもちろん、練習・更衣・食堂など試合前の準備・ウォーミングアップのための所要面積も増大している。既存の本館だけでは練習道場などの所要面積を確保できないので、本館に隣接して中道場棟を増築することとなった。

本館大屋根は富士の裾野をモチーフにした雄大な反りを持ったカーブで、優美さの中にも力強さ・躍動感を感じさせる屋根であるが、中道場棟の屋根には心を落ち着かせる意匠が求められ、逆にごく僅かなムクリを持たせることとした。軒先の伸びやかな水平線と相まって静けさの中に緊張感を秘めたデザインとするとともに、屋根の高さは本館2階バルコニーの水平ラインと合せることで連続性を持たせた。

屋根材の色彩は公園の緑及び本館屋根との調和の観点から緑青色とし、人工的でのっぺりとした印象を与えないよう、ごく僅かな明度・彩度差の2色の屋根材をランダムに混ぜて葺く計画とした。本館でも使われている縦ルーバーを外壁面・窓に設け、外観に表情と陰影を与えるとともに、本館を含めた施設全体の統一感を造り出した。

本館地下2階アリーナ試合場へのスムーズな選手移動を確保するため、中道場棟地下2階に練習道場を設け、地下連絡道にて本館と接続している。400畳の練習道場はドライエリアに面した窓を南北両面に設け、採光・通風を確保している。

1階には多様な用途に対応できるようゆったりとしたスペースを確保したホール、レストラン、売店、貸会議室を設けた。公園散策者の利用を想定して1階ホールに隣接して大面積のトイレを設けている。男女トイレの仕切り壁は2カ所切り替え可能とし、イベントごとに異なる男女比への対応を考慮した。混雑回避のためにトイレの機能分散や大小さまざまな多目的トイレを配置することによりLGBTの方への配慮を行った。 

建物概要

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う日本武道館会場準備計画案に関する増改修工事

竣工年 :2020年

建築主 :公益財団法人 日本武道館

施 工 :株式会社 竹中工務店

用 途 :スポーツ練習場

延床面積:3,050㎡(延床面積) 1,479㎡(建築面積)

構 造 :SRC一部S

階 数 :地上1階、地下2階建

高 さ :8.1m(最高高さ) 4.1m(軒高)

所在地 :東京都千代田区北の丸公園2-3